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Compassionate Useについて(海外の事例から)

最終更新日:平成28年4月19日

 

Compassionate useは人道的見地から治験実施中の未承認薬を使用可能とするものです。正式にはExpanded Accessというそうです。

 

・アメリカでは、抗癌剤のイレッサなどが、未承認段階で多くの患者にCompassionate useで投与された経緯があります。ALSにおいてもGenervon社のGM604やCytokinetics社のtirasemtivなどがCompassionate useで投与されています。

 

▽未承認薬が使用可能となることの、メリットとデメリットは以下となります

【メリット】

・ALSなど一刻を争う生命に関わる疾患において、近年発展の目覚しい再生医療領域における新規薬剤をいち早く使用することが出来る可能性がある

【デメリット】

・高額な負担がかかる

・危険性や有効性についての評価が十分ではない薬剤となるため、リスクを伴う

 

・日本版Compassionate useとも言うべき拡大治験制度が平成28年4月から施行されます。この制度については別ページにまとめます

 

▽アメリカALS協会のWebinarでは60歳のALS女性の症例が報告されていました。大学教授であった彼女は、臨床試験への参加を希望しました。臨床試験中であったtirasemtivの使用を希望しました。

 

臨床試験中の薬剤を使用するための手段はあるのでしょうか?どのような手続きを踏めばいいのか、費用はどうなるのか?などが問題です

 

▽このような臨床試験中の薬剤の使用はExpanded Accessといわれています

 

▽Expanded Accessは、開発中の未承認薬や、FDAのリスク軽減戦略に基づいて管理中である既承認薬について、代替的治療法がない生命に関わる疾患や病態の治療において、特例的にFDAが使用を認可するものです。

 

▽原則的には未承認薬の使用は認められていません。しかし通常の薬剤の審査プロセスを通すと、臨床試験からFDAの審査まで長期間かかります。

 

▽そこでFDAは生命リスクの高い状態について、特例を設けました。それがExpanded Accessであり、以下の3つの要件が必要とされます
1.薬剤が生命リスクの高い疾患を対象としたものであり、代替的治療法がないもの
2.期待される有益性が、リスクを上回ること
3、Expanded Accessは、臨床試験の進捗と無関係であること

 

▽さらに以下の点も要求されます
1.個別の症例を対象にする場合:その症例について使用する合理性があること、さらに患者数が増加した場合、group IND(investigational new drug:治験薬についての申請資料提出)が必要となる
2.約100名未満の患者を対象にExpanded Accessを承認する場合:用量と投薬期間について安全性が確認されていること、有効性についての予備的な試験結果が存在すること
3.100名以上の患者にExpanded Accessを承認する場合:第3相ないし第2相臨床試験において、有効性に関するエビデンスが存在すること。生命リスクが高いことが臨床的根拠をもって確立されている疾患であること
などです

 

▽1名の患者がExpanded Accessに参加する場合は以下の手順をふみます
1.患者ないし医師が製薬会社に連絡を取り、薬剤の提供と、費用について相談する
2.製薬会社が薬剤提供に同意した場合、主治医は以下の手続きを行う必要がある
・単一患者に対する投薬とモニタリングのプロトコル作成
・同意書式の作成
・所属組織の治験審査委員会に申請し、承認を得ること
・FDAに個別患者のIND(新薬申請)について申請し、承認を得ること
・患者の保険が治療と経過観察をカバーできるか確認すること

 

▽集団でのINDの場合には、以上の過程を主治医と製薬会社が行うようです

 

▽製薬会社としては、集団でのINDを通常行うようです。プロトコルを個別化する必要がなく、費用がかからないことと、患者への差別化が少ないことなどの理由のようです

 

▽実際に行われたケースとして、AIDS治療薬で臨床試験に参加できなかった21000名の患者を対象にした場合や、非小細胞癌治療薬のイレッサで、第2相臨床試験と平行して、25000名が参加したもの、慢性骨髄性白血病治療薬のgleevecで7500名が参加したもの、臨床試験に参加後、終了後もそのまま継続して投薬を続けた場合などがあるようです

 

▽Expanded Accessには費用がかかるため、アメリカではALS患者のための基金(ALS-ETF)が2012年に設立されているようです。

 

▽冒頭の60歳の女性に戻りますが、この女性はALS-ETFにより準備された集団INDに参加することにしたとのことです。ALS-ETFは製薬会社と、最適な費用で薬剤を提供できるよう協議し、薬剤投与の安全性、有効性などについてのプロトコル作成を専門家と協議しました。またFDAに提出する書類作成を行ったとのことです

 

・FDAのホームページにて、Expanded Accessについて解説したページがあり、以下のような点が、Expanded Accessの障壁になるとの記載がありました
1.主治医がリスクなどのため未承認薬の使用を承認しない場合
2.製薬会社が、臨床試験外での使用を承認しない場合
3.製薬会社に、未承認薬の在庫がない場合
4.Expanded Accessを申請可能なのは免許をもった医師のみで、申請にも多大な手間とコストがかかること。保険会社も未承認薬の使用で生じた副作用は保障しないことが多いこと

 

(記事作成年月日:平成28年4月日)

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