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患者申出療養制度について

最終更新日:平成28年4月17日

 

・患者申出療養制度とは、未承認薬剤など先進的な医療について、患者から厚生労働大臣に対して、使用を申し出ることができる制度です。申出に際しては、臨床研究中核病院において倫理審査委員会等含め、その是非を検討し、その意見書を添えて、国に対して申請をし、承認を得る必要があります。

 

・厚労省によれば、”困難な病気と闘う患者の思いに応えるため、先進的な医療について、患者の申出を起点とし、安全性・有効性等を確認しつつ、身近な医療機関で迅速に受けられるようにするものである”とされていますが、審査過程など、なかなかハードルが高い印象です。原則的には”臨床研究”としての位置づけのようです。

 

・平成28年4月からの施行となります。ALS患者の権利拡大としては望ましいと思われますが、蓋を開けてみてどうなるかはまだわかりません。以下現在までの情報についてまとめます

 

△▽△▽△▽△▽△▽△▽【患者申出療養制度とは】△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

「患者自身の申し出により、自己負担(保険外診療)で先進的な医療の適応についての申請を国に行うことができ、承認されれば、身近な医療機関で、臨床研究として、その医療を受けられる制度」です。
 

・国への申請にいたるプロセスは簡単ではありません。とても時間と手間、費用のかかる制度です。
 

・申請があった場合、原則6週間以内に国が審査することとありますが、これは全ての書類がそろい、国に申請がなされてから、国側の審査でかかる時間であり、それまでの準備(臨床研究中核病院での実施計画作成や申請書類作成などにかかる時間)にかかる時間は考慮されていません。
 

・この準備にかかる時間は、かなりのものになる可能性があり、1年前後といった時間単位で想定されているようです。また書類作成などにかかる費用も 全て患者負担となります。

 

・患者申出療養制度の詳細にうつる前に、現段階で日本国内において、患者が未承認薬・適応外薬を使用する手段についてまとめます

 

△▽△▽△▽△△▽△▽△▽【患者が未承認薬・適応外薬を使う手段】▽△▽△▽△△▽△▽△▽△

 

○臨床研究、臨床試験などへの参加

 

(公募や招待など様々な方法で募集されているものに、患者が応募して、選ばれれば参加可能なもの)
・企業主導治験への参加
・医師主導治験への参加
・先進医療Bへの参加
・大学や研究機関、医療機関などで実施される、治験ではない臨床試験への参加

 

(患者自身の申出を起点として、承認されれば参加可能なもの)
【今回新設】拡大治験(日本版Compassionate Use)
【今回新設】患者申出療養制度

 

○診療などの場において未承認薬・適応外薬を使用するもの:自己責任や負担、リスクの度合いが大きい

 

・個人輸入ないし自由診療
・海外で実施されているCompassionate useへの参加、海外での自由診療
・既に承認されている薬剤の適応外使用を行う際に、査定覚悟で診療の場で処方してもらう(望ましくない)

 

(治験と臨床試験とがありますが、治験とは、厚労省から承認を受けることを目的とした臨床試験のことです)

 

△▽△▽△▽△△▽△▽△▽【患者申出療養制度利用の手順】△▽△▽△▽△△▽△▽△▽

 

1.「この新薬は未承認だけど、使うことができないだろうか。。」


2.主治医に相談→主治医を通して”患者からの申出に係る相談”の窓口のある病院(臨床研究中核病院ないし特定機能病院(大学病院など))に相談(紹介:セカンドオピニオン外来になると思われます)する。もしくは、自ら臨床研究中核病院ないし特定機能病院の窓口に相談することもできます(その場合、主治医からの紹介状を求められると思われます)
 

3.特定機能病院または臨床研究中核病院において、申し出のあった薬剤が、現在先進医療として実施されていないか、あるいは既に患者申出療養として実施されていないか、もしくは、治験として実施中ではないかを確認(この作業は、特定機能病院が臨床研究中核病院と連携し行われることになると思われます)
 

4.先進医療として既に実施されている場合、患者が臨床研究中核病院の意見書を添えて、国に申出を行い、国での原則6週間の審査を経て、承認された場合、臨床研究中核病院ないし協力医療機関で治療を受けることができます
 

5.患者申出療養として既に実施されている場合、患者は臨床研究中核病院に申出を行い、臨床研究中核病院において原則2週間の審査を経て、承認された場合、身近な医療機関で治療を受けることができます。
 

6.治験が実施中である場合、拡大治験(Compassionate Use)の方向性を模索することになります(その流れは後述)。
 

7.いずれにも該当しない場合、患者申出療養制度の適応になります。ただし、主治医の協力も必要であり(仮に国に申請が認められた場合で、臨床研究中核病院が主治医の属する医療機関を協力医療機関として国に申請した場合、そのまま主治医がその治療を行うことになります)、主治医と十分に協議の上、理解と承認の上で申請に進む必要があります。
 

8.申出を受けた臨床研究中核病院では、申出を受理する前に、以下の内容について確認が行われます
▽標準的な治療法がないこと
▽申出が行われた治療が、保険収載を前提に一定の安全性・有効性が確認されたものであること
▽自己負担が高額になるが、これらを支払うことができること
▽国への申出までに長期間(現段階では1年前後と見込まれています)要すること(臨床研究中核病院においては、実施届出文書、臨床研究計画書、説明同意文書、医療技術の概要、保険収載に至る過程、倫理審査委員会の開催要項などの書類を作成し、さらに薬剤の提供企業との交渉、輸入の場合には海外企業との交渉や税関との交渉などを行う必要があります。そのためかなりの手間隙がかかる作業となります)

 

9.以上の点について全て確認がとれた場合、臨床研究中核病院では、委員会の審査を経て、承認されれば、上記書類などを含む臨床研究中核病院開設者の意見書としてまとめ、患者に渡すこととなります。
 

10.これら意見書などの書類を、患者自身で厚労省に提出することとなります。提出後、患者申出療養評価会議による審議を経て、原則6週間以内に実施の是否が判断されます。
 

11.患者申出療養が実施可能となれば、臨床研究中核病院ないし、臨床研究中核病院が申請し国に認められた協力医療機関で治療を受けることができることになります

 

△▽△▽△▽△▽△▽△【拡大治験について(人道的見地からの治験)】△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

・日本版Compassionate Useといわれる拡大治験の流れについてです。
 

・申出の対象となる治療法が治験実施中であれば、まずは人道的見地から治験への組み込みが検討されます。

 

1.申出のあった治療法が現在治験実施中(ただし、その治験は国内開発の最終段階の治験の終了後ないし、募集終了後で実施中であること)であれば、臨床研究中核病院などが、主治医に情報提供を行います。
 

2.主治医は治験実施企業に、拡大治験への参加を打診します
 

3.治験実施企業は、主治医と治験実施医療機関の医師と実現可能性について検討
 

4.主治医は、治験実施企業に拡大治験への参加を正式に要望
 

5.治験実施企業は、実施の可否を判断し、拡大治験実施計画書を作成
 

6.患者は、治験を実施している医療機関に行って、そこで治験に参加します(治験の参加施設が拡大するわけではないため、患者が実施医療機関に出向かないといけません)
 

7.拡大治験の場合、補償については、あくまで治験の枠内であることから、治験として可能な範囲で適切な補償措置を講じることとされています。

 

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